SSブログ
読書記録 ブログトップ

黒書院の六兵衛 浅田次郎:著 [読書記録]


黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

黒書院の六兵衛 上 (文春文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫



黒書院の六兵衛 下 (文春文庫)

黒書院の六兵衛 下 (文春文庫)

  • 作者: 浅田 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 文庫




浅田次郎の本も、だいぶたくさん読んでいたけど、しばらくご無沙汰だったので、新聞の書評を見て買ってみた。

浅田さんのお話はとても面白いんだけど、「憑神」なんかでも、我らが水戸の御殿様や藩士たちのことについて、あまりよく書いてくれないところは、ちょっと不満。

今回のお話も、幕末の、江戸城明け渡しにまつわる話なので、ところどころ、慶喜公がけなされている。それはまあ、仕方がないか。

主人公は、尾張徳川家の徒組頭という加倉井隼人という人物。
江戸屋敷詰めなので、尾張には行ったこともないし、偉い役職でもないので、江戸城にもあがったことはないという下級武士なのだが、突然、官軍方の先発隊長の役目を申し付けられ、自分の組の部下を従えて、官軍の服を着せられ、江戸城に上がることになる。

後からお城に上がる官軍の本体の先触れとして、城内に問題がないかどうか確認するだけのお役目、の、はずが、怪しい人物が一人いることがわかり、隼人の苦悩が始まる。

御書院藩士の六兵衛という武士が、ただ居座り続けていて、口もきかず、食事もせず、横になることもせず、動かないというのだ。
六兵衛とは何者か、それも謎だったのだが、少しずつ明らかになっていく。

浅田さんは、ストーリーテラーなので、とにかく、読んでいて飽きない。
武士の階級や役目の話やら、江戸城の内部の話やら、ちっとも知識が無くて読んでいるのだが、読み進めていくと、へえ~、そんなふうになっているのか、と、お勉強になることばかりである。
江戸城西の丸の見取り図もあるので、それを見ながら、今六兵衛はどこにいるんだなと、確認しつつ読む。
六兵衛は、最初、玄関近くの御書院番泊部屋や、虎の間に居たのだが、だんだんと身分が高い人たちの使う部屋に移動して行ってしまうので、見取り図を見ながら、ほうほう、と読んでいく。

勝海舟や、他の登場人物も、面白く書かれていて、エンターテインメントとしては、非情に面白い。

それでまあ、なぜ、六兵衛は最後まで居座り続けたのか、そして突然立ち去ってしまったのか、主人公の隼人は自分なりに解釈して、納得したという最後なのだが、正直なところ、私には十分には理解できなかった。

本当に六兵衛って、正体は何だったのよ?
武士にとって本当に大切な「武士の魂」って、どういうことだったのよ?

うーん、わかる人にはわかるのかなあ。

私も自分の持てる知識を総動員して、いろいろと解釈してみようと思ったんだけど、やっぱり謎だらけ。
なんとなく、もやもやとした読後感だった。

誰か、読んだ感想を教えてくれないかなあ。

モナドの領域 筒井康隆・著 [読書記録]


モナドの領域

モナドの領域

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/12/03
  • メディア: 単行本




発売されてすぐに買ったのだけど、当時はいろいろやらなきゃならないことがあったので、ゆっくり読書が楽しめる時期になったら読もう、と、最近まで封印しておいた。

何しろ、著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する究極の小説だというから、ものすごく期待して読み始めた。

冒頭では、河川敷で女性のものと思われる片腕が発見され、美貌の警部が登場してきて、あれ?これは「富豪刑事」みたいな展開になるのかな?と思いきや、何かに憑依されたような芸大の学生が出てきて、発見された片腕に瓜二つのパンを焼いたり、個性的な大学教授が出てきて、それも何かに憑依されてしまって、自ら「神」を名乗ったり、その「神」が法廷に呼ばれたり、ハチャメチャな方向に話が展開していく。

今までの筒井作品のどこかで読んだ話が、あちこちにちりばめられていて、筒井作品をたくさん読んでいる人には、あー、なるほど、ここでこう来たか、と、楽しめる作品にはなっているけど、初めて読む人には、なんだかわけのわからないストーリーにしか思えないだろうなあと。

「神」というのは、特定の宗教の神ではなくて、この世界を作った「宇宙意思」であって、そういう存在が、日本のある場所に降臨してしまうというのも、かなりめちゃくちゃだけど、この、「神」は、混迷する世の中に「救い」をもたらしたりはしない。
生まれるのも、滅びるのも、宇宙意思の美学なのだと。
美しいものも、醜いものも、同じように愛おしい存在であるということ。

若いころから筒井作品を読んできて、筒井的思想に洗脳されている私には、すんなり入ってくる内容なんだけど、他の人たちはどんな風に読んだんだろう?と、気になって検索してみた。

筒井康隆がどう読んでも「最高傑作」じゃない『モナドの領域』を「最高傑作」と言い切った理由
http://top.tsite.jp/news/tv-drama/o/26660124/index

今週の本棚 池澤夏樹・評 『モナドの領域』=筒井康隆・著
https://mainichi.jp/articles/20160110/ddm/015/070/032000c

筒井康隆最後の長篇か? 噂の「モナドの領域」最速レビュー
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20150908/E1441618598824.html

ついでに著者本人の談
巨匠・筒井康隆が最後の長編小説『モナドの領域』を語る
「究極のテーマ『神』について書いたので、これ以上書くことはない」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47287

この本を読みながら思ったのは、あー、私って、筒井さんの本を若い時から読んでいたから、特定の宗教を心から信じるっていうことができないんだろうなあ、ということ。
キリスト教もユダヤ教もイスラム教も、みんな同じ。
この世界を作ったという、造物主は、たった一つなのだろう。
仏教は宗教じゃなくて哲学だっていう意見もあるけど、根本にある宇宙の理の考え方は、みんな一緒だろう。

というわけで、今は、ちょっとイスラム教についても知ってみようかなあと思って、こんな本を読んでいる。

コーランを知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: 文庫



久々に「宮部みゆき」を読んだ。これはまさに、カウンセリングのお話だね。 [読書記録]

職場の売店をうろうろしていて、久しぶりに宮部みゆきを読んでみようかと、「泣き童子」という本を買ってきてみたんだが、読み始めてみたら、あれ?これはシリーズものなのかな?
調べてみたら、前作が2つあって、どうやら続いている話みたい。
であれば、最初から読んでみないとつまらない。
まあ、宮部さんのお話は、途中から読んでもわかりやすいように、注釈やあらすじ的な記述があるので、そこから読んでもよかったんだけどね。

結局、Amazonで検索して、前作2冊を購入、届くまでは「泣き童子」はお預けにすることに。

で、最初から読み始まったんだけど、やはり面白い。
最初は病院などの待合の時間だけ読もうと思っていたんだけど、読み始めたら止まらなくなってしまって、結局3冊全部、続けて読んでしまった。

主人公は、悲惨な経験のために、実家を離れて叔父の家に身を寄せている17歳の「おちか」。
お嬢様然と暮らしてもいいのに、悲しい記憶を忘れようと、女中奉公をしてわざと毎日を忙しくしている。
あることをきっかけに、自分と同じように悲しい出来事を持っている人の話を聞くことで、自分の心が少しずつほどけていくことを知り、叔父の勧めで「不思議体験」を持つ人の話を聴くという仕事をするようになる。

不思議な話をしてくれる人を集める触れ込みは、「変り百物語」ということで、通常なら一晩に百の話を聴くところだが、1回に1人ずつ話を聴いて、百人募るというもの。

持ち込まれる話はどれも辛い出来事で、そこに宮部みゆき独特の妖の世界が関わっているわけだが、おちかは、その話を聴いて自分自身の身に降りかかった出来事を照らしながら、苦悩しながらも、一つひとつ解決への道を進むというもの。

それぞれの話の不思議さも魅力的だが、文章のあちこちにちりばめられた江戸の風俗の描写も面白い。

と、読み進めてきて、あー、これはカウンセリングの話だなあと思い当たった。
百物語で話されることは、語りっぱなし、聞きっぱなしで、部屋から出たらその話題には触れず、他人にも語らないという約束事になっている。
それでも、話に来た人は、話を聴いてもらった後、心を軽くして部屋を去ることができる。
長い間自分だけの心に閉じ込めてきたことを、誰かに聴いてもらうことで、荷を下ろすことができるのだ。
生きる希望を得る人もいれば、語り終えて安らかな気持ちになって、あの世の世界に旅立つ人もいる。

おちかは何も自分の考えを挟むこともなく、ただ聴くだけであり、その姿勢はところどころにカウンセリングの心構えのようなものを感じる。
そして、おちか自身の心も徐々に解き放たれ、成長していく様子が描かれている。

3作目でようやく18話なので、あと87話を聴かないと百物語にはならない。
このシリーズはまだまだ続きそうで、次の話が楽しみである。



おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

おそろし 三島屋変調百物語事始 (角川文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/04/25
  • メディア: ペーパーバック





あんじゅう 三島屋変調百物語事続 (角川文庫)

あんじゅう 三島屋変調百物語事続 (角川文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/06/21
  • メディア: 文庫





泣き童子 三島屋変調百物語参之続 (角川文庫)

泣き童子 三島屋変調百物語参之続 (角川文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

オープンダイアローグとは何か 斎藤 環 著+訳 [読書記録]

51d3p4UM0dL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg

オープンダイアローグとは何か 斎藤 環 著+訳

統合失調症やうつ病などには薬物治療が必要だとは考えるつつ、カウンセリングや認知行動療法等が無ければうまくいかないのではないかと思っていたが、この「オープンダイアローグ」は、薬物の力を借りずに治療するというフィンランド発の手法で、齋藤環先生が惚れ込み、日本でも取り組むことができないかと啓発活動をされているものである。

カウンセリングが、クライアントとセラピストが1対1で話をするのに対し、オープンダイアローグでは、患者と家族(その他親戚、医師、看護師など、重要と思われる人たち誰でも)とセラピストが2人以上参加するチームを作って、ミーティングをするという手法が取られる。

オープンダイアローグ実践のための12項目は、以下の通り。

1.ミーティングには2人以上のセラピストが参加する。
2.家族とネットワークメンバーが参加する。
3.開かれた質問をする。
4.クライアントの発言に応える。
5.今この瞬間を大切にする。
6.複数の視点を引き出す。
7.対話において関係性に注目する。
8.問題発言や問題行動には、淡々と対応しつつ、その意味には注意を払う。
9.症状ではなく、クライアント独自の言葉や物語を強調する。
10.ミーティングにおいて専門家どうしの会話(リフレクティング)を用いる。
11.透明性を保つ。
12.不確実性への耐性。

開かれた質問や、今この瞬間を大切にするなど、ロジャースの来談者中心療法に共通すると思われるが、一番大きな違いは、「リフレクティング」である。

これは、ミーティングの途中で、参加メンバーに了解を得て、セラピストが患者についてやり取りをすることで、その内容は患者も家族も他のメンバーも同席している中で行われる。
「彼女は、自分自身よりも他人の気持ちを大切にする人なんだね。」
「自分の権利を強く主張するのが苦手な人なんじゃないかな。」
など、セラピスト同士の会話が行われ、患者もそれを耳にすることになる。

これは、患者にとって、自分に関わってくれている人たちが、自分についてどう感じているか、考えているかがわかり、透明性を保つことになるし、自分に向けられた評価を間接的に聞くことの方が信憑性が高いと感じられて、情緒的な安心感を得られるという効果がある。

発達障害や精神疾患の方が、支援を受けるために窓口を訪ねた折に、対応した職員の方が、職員どうしで、あたかも当人が目の前にいないような会話をして、自分がないがしろにされたような気持になって傷ついた、などという話を耳にするが、リフレクティングはそれとは全く逆の状況を作り出す。

また、妄想のある患者については、その妄想を否定するのではなく、さらに踏み込んでその状況を聴くことで、患者の感じている正体不明の恐怖を、言葉にして表現することを助ける。

予断や憶測は避ける、合意を得ることが目的ではない、結論を出すことは急がない、など、いろいろな特徴がかかれており、実際のオープンダイアローグの内容も紹介されていて、著者の斎藤先生が、ぜひ日本にも紹介したいという思いが、詰まっている本である。

フィンランドでは非常に効果を上げ、高い評価を得ているという手法だそうだが、斎藤先生がかかれている通り、日本で実践するのは簡単ではないだろう。

しかし、その手法や思想のエッセンスは、カウンセラーの端くれである私にも、非常に参考になる内容であった。

せめて、1人でも多くの関心のある人の目に触れて、こういう手法もあるのだということを知っていただきたい。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

言ってはいけない 残酷すぎる真実 [読書記録]

ダウンロード.jfif


言ってはいけない 残酷すぎる真実   橘 玲:著  新潮新書

「この本の内容を気安く口外しないで下さい。」と帯に書いてあるので、気安く感想を書けないんだが。

本屋でたまたま見つけて買ってみたんだけど、Amazonだと、結構人気の本だったらしい。

気になったところ。

心拍数の低い子どもは高い子どもより共感力が低い。
共感力を欠く子どもは他人の立場に身を置くことができず、いじめられたり殴られたりするとどんな気分になるか想像できない。

自閉症や情緒障害といった発達障害は身長や体重よりも遺伝の影響が大きい。

子どもの人格や能力・才能の形成に子育てはほとんど関係ない。

私はどのように「わたし」になるのか、というのは、エリクソンのいうアイデンティティに通じるね。



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

半減期を祝って 津島祐子 [読書記録]

51aVrdwPJ5L._SX342_BO1,204,203,200_.jpg
群像 2016年 03 月号

新聞の書評を読んで気になったので、めったに買わない雑誌を買ってみた。
作中に登場する「ASD」が、自閉症スペクトラムに掛けているようだという、書評の一文が興味を引いたので、読んでみようと思った。

この雑誌のテーマは、「30年後の世界 作家の想像力」
東日本大震災から35年、戦後101年の〈30年後〉を、作家はどう描くのか。
重要なのは予想ではなく、想像すること。それが文学の持つ力なのではないでしょうか。
と、もくじには書かれていて、12人の作家のアンソロジーが並んでいる。

その巻頭を飾っているのが、津島さんの「半減期を祝って」というもの。

うーん、なんで、これが巻頭なのかがわからない。
他の11人のうちには、もっと面白い作品があるのに。

SFというには、知識の誤りが多すぎる。
セシウム137が30年経って半減期になったから、当初の半分の量になって、もう怖がることはありません、って、セシウム137が、半分であろうと、そこに存在するなら、放射線は出し続けているはず。
そこに有るなら、だけど。
一所懸命に除染したからね、汚染物を包んであるゴミの山は、まだ片付けられないで、積み上げられているけど、住宅付近はだいぶ減っていると思うよ。

「事故現場に一番近い村」って、一応、原発の周囲は、「町」なんだけど。
ちょっと離れた内陸部には、村もあるけどね。
研究者や観光客が訪れるっていうなら、そんな離れたところにある村じゃないはずだよね。

それから、原発にミサイルを落としても、核爆発はしないから。
原理が違うし。

「ASD」についての記述は、はっきり言って、不快。
書評を書いた人が、これを自閉症スペクトラムに準えていると読んだとしたら、あまりにも偏見がありすぎる。

純粋なヤマト人種だけが入団を許されていて、アイヌ人、オキナワ人、チョウセン系人種と、トウホク人は入団を許されていないくて、トウホク人は一番評価が低くて、二ホン社会に実害を及ぼしているって、なにそれ。

この作者は、よほど政府や国家を信用していないのだろうが、その国家が推進している少年少女の団体を「ASD(愛国少年団)」と名付けるとは、そして、まるでヒトラー・ユーゲントみたいな役割に書くとは、何を考えているのやら。

想像力というよりも、ただただ暗いだけの妄想。
この人の30年後には、明るい未来はないのかもしれないけど、それにしても、気分の悪い誤解が多すぎる。
いったい、誰に向けて、何が言いたいのか。

そういえば、この人の書いたものを、初めて読んだわけだ。
太宰治のお嬢さんだということは知ってたが、作品を読んだことは、ついぞなかったので、よい機会になった。
まあ、たぶん、今後は読まないと思うが。

他のアンソロジーで、なかなか面白いものが数点あったので、その作者の作品は、見つけたら読んでみようと思っている。
新しい書き手との出会いがあるから、こういう雑誌をたまに買うのもいいね。
文藝春秋よりはボリュームが少ないから、あまり負担に感じないしね。



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
読書記録 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。