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オープンダイアローグとは何か 斎藤 環 著+訳 [読書記録]

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オープンダイアローグとは何か 斎藤 環 著+訳

統合失調症やうつ病などには薬物治療が必要だとは考えるつつ、カウンセリングや認知行動療法等が無ければうまくいかないのではないかと思っていたが、この「オープンダイアローグ」は、薬物の力を借りずに治療するというフィンランド発の手法で、齋藤環先生が惚れ込み、日本でも取り組むことができないかと啓発活動をされているものである。

カウンセリングが、クライアントとセラピストが1対1で話をするのに対し、オープンダイアローグでは、患者と家族(その他親戚、医師、看護師など、重要と思われる人たち誰でも)とセラピストが2人以上参加するチームを作って、ミーティングをするという手法が取られる。

オープンダイアローグ実践のための12項目は、以下の通り。

1.ミーティングには2人以上のセラピストが参加する。
2.家族とネットワークメンバーが参加する。
3.開かれた質問をする。
4.クライアントの発言に応える。
5.今この瞬間を大切にする。
6.複数の視点を引き出す。
7.対話において関係性に注目する。
8.問題発言や問題行動には、淡々と対応しつつ、その意味には注意を払う。
9.症状ではなく、クライアント独自の言葉や物語を強調する。
10.ミーティングにおいて専門家どうしの会話(リフレクティング)を用いる。
11.透明性を保つ。
12.不確実性への耐性。

開かれた質問や、今この瞬間を大切にするなど、ロジャースの来談者中心療法に共通すると思われるが、一番大きな違いは、「リフレクティング」である。

これは、ミーティングの途中で、参加メンバーに了解を得て、セラピストが患者についてやり取りをすることで、その内容は患者も家族も他のメンバーも同席している中で行われる。
「彼女は、自分自身よりも他人の気持ちを大切にする人なんだね。」
「自分の権利を強く主張するのが苦手な人なんじゃないかな。」
など、セラピスト同士の会話が行われ、患者もそれを耳にすることになる。

これは、患者にとって、自分に関わってくれている人たちが、自分についてどう感じているか、考えているかがわかり、透明性を保つことになるし、自分に向けられた評価を間接的に聞くことの方が信憑性が高いと感じられて、情緒的な安心感を得られるという効果がある。

発達障害や精神疾患の方が、支援を受けるために窓口を訪ねた折に、対応した職員の方が、職員どうしで、あたかも当人が目の前にいないような会話をして、自分がないがしろにされたような気持になって傷ついた、などという話を耳にするが、リフレクティングはそれとは全く逆の状況を作り出す。

また、妄想のある患者については、その妄想を否定するのではなく、さらに踏み込んでその状況を聴くことで、患者の感じている正体不明の恐怖を、言葉にして表現することを助ける。

予断や憶測は避ける、合意を得ることが目的ではない、結論を出すことは急がない、など、いろいろな特徴がかかれており、実際のオープンダイアローグの内容も紹介されていて、著者の斎藤先生が、ぜひ日本にも紹介したいという思いが、詰まっている本である。

フィンランドでは非常に効果を上げ、高い評価を得ているという手法だそうだが、斎藤先生がかかれている通り、日本で実践するのは簡単ではないだろう。

しかし、その手法や思想のエッセンスは、カウンセラーの端くれである私にも、非常に参考になる内容であった。

せめて、1人でも多くの関心のある人の目に触れて、こういう手法もあるのだということを知っていただきたい。


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