モナドの領域 筒井康隆・著 [読書記録]
発売されてすぐに買ったのだけど、当時はいろいろやらなきゃならないことがあったので、ゆっくり読書が楽しめる時期になったら読もう、と、最近まで封印しておいた。
何しろ、著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言する究極の小説だというから、ものすごく期待して読み始めた。
冒頭では、河川敷で女性のものと思われる片腕が発見され、美貌の警部が登場してきて、あれ?これは「富豪刑事」みたいな展開になるのかな?と思いきや、何かに憑依されたような芸大の学生が出てきて、発見された片腕に瓜二つのパンを焼いたり、個性的な大学教授が出てきて、それも何かに憑依されてしまって、自ら「神」を名乗ったり、その「神」が法廷に呼ばれたり、ハチャメチャな方向に話が展開していく。
今までの筒井作品のどこかで読んだ話が、あちこちにちりばめられていて、筒井作品をたくさん読んでいる人には、あー、なるほど、ここでこう来たか、と、楽しめる作品にはなっているけど、初めて読む人には、なんだかわけのわからないストーリーにしか思えないだろうなあと。
「神」というのは、特定の宗教の神ではなくて、この世界を作った「宇宙意思」であって、そういう存在が、日本のある場所に降臨してしまうというのも、かなりめちゃくちゃだけど、この、「神」は、混迷する世の中に「救い」をもたらしたりはしない。
生まれるのも、滅びるのも、宇宙意思の美学なのだと。
美しいものも、醜いものも、同じように愛おしい存在であるということ。
若いころから筒井作品を読んできて、筒井的思想に洗脳されている私には、すんなり入ってくる内容なんだけど、他の人たちはどんな風に読んだんだろう?と、気になって検索してみた。
筒井康隆がどう読んでも「最高傑作」じゃない『モナドの領域』を「最高傑作」と言い切った理由
http://top.tsite.jp/news/tv-drama/o/26660124/index
今週の本棚 池澤夏樹・評 『モナドの領域』=筒井康隆・著
https://mainichi.jp/articles/20160110/ddm/015/070/032000c
筒井康隆最後の長篇か? 噂の「モナドの領域」最速レビュー
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20150908/E1441618598824.html
ついでに著者本人の談
巨匠・筒井康隆が最後の長編小説『モナドの領域』を語る
「究極のテーマ『神』について書いたので、これ以上書くことはない」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47287
この本を読みながら思ったのは、あー、私って、筒井さんの本を若い時から読んでいたから、特定の宗教を心から信じるっていうことができないんだろうなあ、ということ。
キリスト教もユダヤ教もイスラム教も、みんな同じ。
この世界を作ったという、造物主は、たった一つなのだろう。
仏教は宗教じゃなくて哲学だっていう意見もあるけど、根本にある宇宙の理の考え方は、みんな一緒だろう。
というわけで、今は、ちょっとイスラム教についても知ってみようかなあと思って、こんな本を読んでいる。
2017-07-09 18:18
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