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他大学との研究交流会に参加して [学会]

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七つ洞公園(映画テルマエロマエのロケ地)の隣にある宿泊研修施設で開催された、1泊2日間の研究交流会に参加してきた。
複数の大学が参加していて、障害者の支援や特別支援教育に関する研究をしている学生が発表するもので、2日間で25件の発表を聴くことができた。

他の大学ではどんな研究をしているのかにも興味があって参加したが、発表内容の多様さもさることながら、質疑応答や意見交換の活発さにも目を見張った。
もしかしたら、今まで参加したどの学会よりも、手厳しい質問が飛び交っていたんではなかろうか。
学生が中心なので、年長者の会員に遠慮して発言を控えるとかもないしね。

以下は、一言感想。(とりあえず、1日目の分)

◆聴覚障害者の発音明瞭度に関する研究
特別支援学校に所属する聴覚障害者は、高等部ごろから手話を覚え、手話中心の会話になると、声を出して会話することが少なくなるので、音声明瞭度が下がってくるそうだ。
それに比べ、通常学校に所属する聴覚障害者は、常に口話で意思伝達をする必要があるので、発音明瞭度が保たれる。
たしかにその様だ。
いずれ社会に出て、一般の人の中で仕事をするようになることを考えると、聴こえなくても発音明瞭度を保つということに意味がありそうだ。

◆書字指導法に関する研究
書字障害がある子どもが、初めて見た漢字を書き写そうとするときは、脳内の血流が変わるそうだ。
健常者や大人は、初めて見た漢字を書くときに、それほど血流が変わらず、それは部首等部分に見覚えがあるからだろうと。

◆幼児期の協調運動能力の評価について
質問紙で、外遊びが好きかという項目があった点について、発表者は「外遊びが好きなら、運動能力が高い」という判断があったらしいが、「外遊びが好きだからと言って、協調運動能力が高いとは、必ずしも言えないだろう」と、かなり突っ込まれていた。
たしかにそうだよねえ。

◆知的障害児の筆記プロセスについて
健常児の小学1年生3人と、ダウン症の5人を対象とした書字指導についての発表だったが、先生方からのコメントが、かなり厳しかった。
たしかに、知的障害やダウン症と一口に言っても、それぞれ持てる能力には差があるだろうからね。
一般化は、なかなか難しいよね。

◆紙芝居の読み聞かせ場面では、幼児はどこを見ているか
年少児、年中児、年長児の場合を比較し、年齢が上がると文字がわかるようになるので、絵よりも文字を見ていることが多くなるとか、語り掛け場面では、紙芝居の画面よりも話者の顔を見ていることが多いとか。
年齢にかかわらず、話者の演技力が巧みだったら、誰でも話者の顔を見てしまうんじゃないかと思うが、で、この視線計測によって、何がわかるのか、何に役立つのかが、いまいちよくわからない。

◆重度・重複障害児の応答行動について&純音が聴こえているのかなどの研究2件
対象児の、いつも呼ばれている愛称、その愛称と似ている呼び方、ちょっと違う呼び方、かなり違う呼び方などで呼びかけてみて、反応の度合いを計測したもの。
この発表にも厳しい質問多し。
当該児は本当に自分の名前に反応しているのか?慣れ親しんだ人の呼びかけなら、別の名前を呼ばれても反応するんじゃないのか?知的レベルはどうやって測っているのか?などなど。
他者との音楽活動を共有する問題についても、コメントが厳しかった。
これもまた、この研究で何がわかるのか、何が知りたかったのかが、よくわからない。

◆知的障害を伴うASD児の実行機能特性
スケジュールが決まっていて、誰からの指示もなく自分でやれることを「能動的」と表現しているが、実際にスケジュールが決まっていない場面になったら、自分で考えて行動することが果たしてできるのか?学校の活動が全て構造化されていたら、軍隊生活みたいになってしまうのではないのか?など手厳しい質問多し。
能動的とはいえ、やらされているのではないのか?本当に自分の好きなことなら、誰に言われなくても進んでやるんじゃないの?などの意見も。
これは難しいね。

◆脳性麻痺の生徒の認知特性に基づく自己調整学習の支援
「自己効力感はどうなったら上がったと言えるの?」という質問に対して、「点数が上がったら」と答えていたけど、まあね、実際に学校のテストの成績が上がったからと言って、それが自己効力感が上がったと評価していいものかどうかは、私もわからないと思うよ。

◆特別な教育的ニーズのある子どもの創造性の拡大について
ASD児、ADHD児の独創性、効果性を上げる指導についての研究だが、「どうしてASD児、ADHD児を対象にしたの?ASD児やADHD児って、定型発達児よりも独創性があったりするんじゃないの?」「定型発達の人でも、独創性がない人もいるんじゃないの?」「対象児たちは、何に困難があるの?」など、突っ込む突っ込む。
独創性や効果性が無くても、日常生活が送れるようになれば、困難なく生活できるようになるしね。

◆知的遅れのない発達障害に対するインフォーマルコミュニケーション支援について
雑談ができないことが問題なので、インフォーマルグループなどでトレーニングするという内容。
トレーニングの内容を具体的に説明するようにというコメントがあったが、そうねえ、ちょっとモヤモヤする。トレーニングを4回ほどやって効果があるようなものなら、誰も苦労はしないと思うが。

◆大学生の障害児・者に対する態度、障害者差別についての調査
潜在的態度、顕在的態度と分けて、潜在的態度をニュートラルに引き上げる取り組み、ということについて発表していたが、差別意識ってそんなに簡単なものじゃないと思うから、潜在的なものを変えていくって、そんなに簡単じゃないと思うよ。
顕在的なもの、実際の態度を、差別的じゃないものにできるのなら、それで達成という感じでもいいんじゃないかと思う。
本音と建前のバイアス?コントロール?
私としては、あからさまに差別的な行動や態度をとる人が少なるというのが望ましいと思う。

◆点字ブロックの実態を調査、視覚障害者へのヒヤリング
分かりやすい発表だったと思うけど、やはり厳しい質問が沢山。
「何年も前から同じような調査をして、同じような意見が出て、毎回同じような指摘をされているけど、それでもちっとも改善されないのは、何に起因していると思う?」「変えていくのには、どうしたらいいと思う?」「失敗しているところのあら探しをするんじゃなくて、成功している地域から学んで、どうしたら成功するのかを考えた方がいいんじゃない?」
皆さん、ごもっともです。


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